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【ベージュブック解説 第1回】仕組みと読み方 - FRBの経済観測レポートを理解する

ベージュブック(地区連銀経済報告)の仕組み、作成方法、FOMCとの関係を解説。定性的な表現の読み方から投資家としての活用法まで、FRBの経済観測レポートを深く理解するためのガイドです。

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ベージュブック解説
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この記事で学ぶこと

  • ベージュブックとは何か
  • 他の経済指標との違い
  • 作成方法と情報収集プロセス
  • FOMCとの関係
  • 投資家としての読み方・活用法

ベージュブックとは

経済の「体感温度」を測るレポート

ベージュブック(Beige Book)は、FRB(連邦準備制度理事会)が発行する定性的な経済レポート です。正式名称は「Summary of Commentary on Current Economic Conditions(現在の経済状況に関する論評の要約)」といいます。

ベージュブックの位置づけ

GDPや雇用統計のような「数字」ではなく、現場のビジネスパーソンから集めた「声」をまとめたレポートです。年8回、FOMC(連邦公開市場委員会)の会合の約2週間前に公開されます。

項目内容
正式名称Summary of Commentary on Current Economic Conditions
通称ベージュブック(Beige Book)
発行頻度年8回(FOMC会合の約2週間前)
発行者12の連邦準備銀行
特徴定性的、現場の声、地域差がわかる

なぜ「ベージュブック」と呼ばれるのか

名前の由来は単純で、表紙の色がベージュ(淡い茶色) だからです。

ベージュブックの歴史

時期出来事
1970年FRB内部資料として作成開始
1983年一般公開開始(透明性向上の一環)
現在FRBのWebサイトで即時公開

1983年以前は「レッドブック」と呼ばれる内部資料でした。公開後は表紙の色から「ベージュブック」という通称が定着しました。


他の経済指標との違い

定量 vs 定性

経済指標には「定量的」なものと「定性的」なものがあります。ベージュブックは後者の代表格です。

経済指標の分類

指標定量/定性頻度時点特徴
GDP定量四半期過去経済全体の規模
雇用統計定量月次過去労働市場の状況
CPI定量月次過去物価の変動
ISM製造業定量月次現在製造業の景況感
ベージュブック定性年8回現在〜将来現場の肌感覚

ベージュブックの強み

定量データだけでは見えない情報がベージュブックからは読み取れます。

ベージュブックでわかること
  • 景気のトレンド(改善/悪化の方向性)
  • 地域ごとの経済格差
  • 企業経営者の実感・見通し
  • 数字に現れる前の「予兆」
ベージュブックでわからないこと
  • 正確な数値
  • 統計的な信頼区間
  • 前月比・前年比の厳密な比較

ポイント

ベージュブックは「数字の裏付け」ではなく「数字の背景にあるストーリー」を提供します。定量データと組み合わせて読むことで、より立体的な経済理解が可能になります。


ベージュブックの構成

全体構造

ベージュブックは「全国サマリー」と「12地区レポート」の2部構成です。

ベージュブックの構造

セクション内容
全国サマリー12地区の報告を集約した全体概況(2〜3ページ)
地区レポート各地区連銀からの詳細報告(地区ごとに2〜4ページ)

投資家や市場関係者がまず読むのは「全国サマリー」です。時間がない場合は全国サマリーだけでも十分な情報が得られます。

カバーされる8つのセクション

ベージュブックの8セクション

各地区レポートでは、以下の8つのセクションについて報告されます。

セクション英語名注目ポイント
経済活動全般Overall Economic Activity景気の全体的な方向性
労働市場Labor Markets雇用・賃金の動向
物価Pricesインフレ圧力
消費支出Consumer Spending個人消費の強さ
製造業Manufacturing生産活動の状況
不動産・建設Real Estate & Construction住宅・商業不動産
金融サービスFinancial Services融資・金融機関の状況
農業Agriculture農産物・天候の影響

作成方法:情報収集のプロセス

誰が作るのか

ベージュブックは12の地区連銀が共同で作成します。

ベージュブック作成の役割分担

役割担当
地区レポート各地区連銀が自地区分を作成
全国サマリー持ち回りで1つの地区が担当
最終確認FRB理事会(Board of Governors)

全国サマリーの担当地区は毎回変わります。担当地区の視点が若干反映されることもあるため、どの地区が担当しているかを確認する投資家もいます。

情報源:約1,200人のビジネスコンタクト

ベージュブックの情報ソース

ベージュブックの情報は「ビジネスコンタクト」と呼ばれる協力者から収集されます。

情報源
企業経営者製造業、小売業、サービス業のCEO・幹部
金融機関銀行、信用組合の融資担当者
不動産関係者不動産業者、建設会社
エコノミスト大学教授、シンクタンク
その他専門家会計士、弁護士、コンサルタント

全米で約1,200人以上のコンタクトから、電話インタビューやアンケートで情報を収集します。

作成タイムライン

ベージュブック作成タイムライン

時期作業内容
FOMC約4週間前情報収集開始
FOMC約3週間前各地区がレポート作成
FOMC約2週間前全国サマリー作成・ 一般公開
FOMC当日金融政策決定の参考資料として使用

公開は通常、水曜日の東部時間14:00(日本時間では深夜3:00または4:00)です。


FOMCとの関係

金融政策決定のインプット

ベージュブックはFOMCが金融政策を決定する際の「定性的な補足資料」です。

FOMCの判断材料

FOMCは以下のような情報を総合的に判断して政策を決定します。

インプット種類
定量データ統計雇用統計、CPI、GDP
定性データレポートベージュブック
市場期待価格FF金利先物、債券利回り
スタッフ予測分析FRBスタッフの経済見通し

ベージュブックの影響度

ベージュブック単体でFRBの政策が決まることはありません。しかし、以下の場合は市場が注目します。

状況市場の反応
トーンが大きく変化政策変更の予兆として注目
インフレ記述が増加利上げ観測が高まる
景気減速の記述が増加利下げ期待が高まる
予想通りの内容反応薄

重要

ベージュブックは「答え」ではなく「ヒント」です。定量データと合わせて読むことで、FRBの政策判断の方向性を予測できます。


定性的表現の読み方

よく使われる表現と意味

ベージュブックには特有の表現パターンがあります。これを理解することで、レポートを効率的に読めるようになります。

ベージュブックの表現スケール

成長・拡大を示す表現(強い順)
表現意味強さ
robust growth力強い成長★★★★★
strong growth強い成長★★★★☆
solid growth堅調な成長★★★☆☆
moderate growth緩やかな成長★★☆☆☆
modest growth小幅な成長★☆☆☆☆
slight growthわずかな成長☆☆☆☆☆
横ばい・変化なし
表現意味
flat横ばい
unchanged変化なし
stable安定
held steady安定を維持
縮小・減少を示す表現(弱い順)
表現意味弱さ
slight declineわずかな減少☆☆☆☆☆
modest decline小幅な減少★☆☆☆☆
moderate decline緩やかな減少★★☆☆☆
significant decline大幅な減少★★★☆☆
sharp decline急激な減少★★★★☆

前回との比較が重要

ベージュブックを読む際は、前回との比較 が最も重要です。

トーン変化の読み取り方

前回今回解釈
modest growthmoderate growth改善(成長が加速)
moderate growthmodest growth減速(成長が鈍化)
flatslight growth改善(底打ち)
flatslight decline悪化(下降トレンド入り)

2025年のベージュブック動向

最新の傾向(2025年11月時点)

2025年のベージュブックからは、以下のような傾向が読み取れます。

項目状況
経済活動地区によりまちまち(mixed)、全体としては緩やかな成長
労働市場軟化傾向、雇用は横ばい、賃金上昇は緩やか
物価引き続き緩やかに上昇、関税の影響を懸念する声
消費支出地区により異なる評価

2025年の注目ポイント

テーマ内容
インフレ動向FRBの利下げペースに影響
労働市場の軟化雇用の「正常化」か「悪化」か
地域差テック地区 vs 製造業地区の温度差
関税の影響企業のコスト懸念

投資家としての活用法

5つのチェックポイント

ベージュブック活用チェックリスト

ベージュブックを投資に活用する際は、以下の5つをチェックしましょう。

Noチェックポイント見るべき場所
1全国サマリーのトーン変化冒頭の全体概況
2インフレ・賃金の記述Prices、Labor Markets
3雇用の評価Labor Markets
4地域差の確認各地区レポートの比較
5先行きの見通し"outlook"、"expectations"の記述

市場への影響パターン

ベージュブックと市場反応

シナリオ株式債券ドル
景気過熱示唆(タカ派的)下落↓下落↓上昇↑
景気減速示唆(ハト派的)上昇↑上昇↑下落↓
予想通り反応薄反応薄反応薄

ベージュブックの入手方法

ベージュブックはFRBのWebサイトで無料で閲覧できます。

アクセス方法
  1. Federal Reserve Board にアクセス
  2. 「Monetary Policy」→「Beige Book」を選択
  3. 最新版または過去のアーカイブを閲覧
効率的な読み方
  1. まず「National Summary」を読む(5分)
  2. 気になるセクション(物価、雇用など)を深掘り(10分)
  3. 関心のある地区レポートを確認(必要に応じて)

まとめ

ベージュブックの要点

項目内容
正式名称Summary of Commentary on Current Economic Conditions
発行頻度年8回(FOMC約2週間前)
特徴定性的、現場の声、地域差がわかる
情報源約1,200人のビジネスコンタクト
構成全国サマリー + 12地区レポート

覚えておくべきポイント

  1. 数字では見えない「経済の体感温度」がわかる
    • 統計に現れる前の「予兆」を捉える
  2. 定量データを補完する「定性的な声」
    • GDPや雇用統計と組み合わせて読む
  3. FOMCの判断材料の一つ
    • 政策変更のヒントを探る
  4. トーン変化と前回比較が重要
    • 単発ではなく時系列で読む
  5. 12地区の特性を知ることでより深く読める
    • 次回の記事で詳しく解説

次回予告

第2回では、12の連邦準備地区それぞれの経済特性を詳しく解説します。テック産業が集積するサンフランシスコ地区、金融の中心地ニューヨーク地区、エネルギー産業のダラス地区など、各地区の産業構造と注目ポイントを学びましょう。


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