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【半導体マスター講座 第1回】半導体とは何か - 1兆ドル市場の全体像

半導体の基礎から市場規模、5大成長ドライバー(AI・EV・データセンター・5G・IoT)まで解説。2030年に1兆ドル市場へ成長する半導体業界の全体像を理解しましょう。

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半導体マスター講座
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はじめに

「半導体」という言葉を聞いたことがない人はいないでしょう。しかし、「半導体とは何か?」と聞かれて、明確に答えられる人は少ないかもしれません。

スマートフォン、パソコン、自動車、エアコン、医療機器——私たちの生活を支えるあらゆる電子機器には、半導体が使われています。そして今、AI(人工知能)の爆発的な普及 により、半導体の重要性はかつてないほど高まっています。

この「半導体マスター講座」では、全7回にわたって半導体業界を体系的に解説します。第1回となる本記事では、半導体の基礎と市場の全体像を理解しましょう。


半導体とは何か?

導体・絶縁体・半導体の違い

物質は電気の流れやすさによって、大きく3つに分類されます。

導体・半導体・絶縁体の違い

分類特徴
導体電気をよく通す銅、金、銀
絶縁体電気を通さないゴム、ガラス、木
半導体条件次第で電気を通すシリコン、ゲルマニウム

半導体の最大の特徴は「制御できる」こと です。温度や電圧などの条件によって、電気を流したり止めたりできます。この特性を利用して、コンピュータの「0」と「1」を表現し、複雑な演算処理を実現しています。

なぜシリコンが使われるのか?

半導体の材料として最も広く使われているのがシリコン(ケイ素) です。その理由は:

  1. 地球上に豊富に存在(地殻の約28%を占める)
  2. 純度を高めやすい(99.999999999%まで精製可能)
  3. 安定した特性(温度変化に強い)

シリコンウエハーと呼ばれる円盤状の基板に、微細な回路を形成することで、CPUやメモリなどの半導体チップが作られます。


半導体はどこで使われているか?

半導体は、私たちの身の回りのあらゆる電子機器に搭載されています。

半導体が使われている製品

製品搭載される半導体役割
スマートフォンSoC、メモリ処理・記憶
パソコンCPU、GPU、SSD演算・描画・保存
自動車パワー半導体、センサー電力制御・検知
家電マイコン、センサー制御・検知
データセンターサーバーCPU、AI GPU大規模演算
医療機器センサー、制御チップ計測・制御

特筆すべきは、現代の自動車には100個以上の半導体 が搭載されていることです。電気自動車(EV)では、その数はさらに増えます。

ポイント

「産業のコメ」から「産業の脳」へ

かつて半導体は、あらゆる産業に必要な基礎素材として「産業のコメ」と呼ばれていました。しかし今や、AIやIoTの中核を担う存在として「産業の脳」へと進化しています。


市場規模:2030年に1兆ドルへ

半導体市場は、2024年時点で約6,000億ドル(約90兆円) 規模に達しています。そして2030年には1兆ドル(約150兆円) を超えると予測されています。

市場規模の推移

市場規模成長率
20215,560億ドル+26.4%
20225,740億ドル+3.2%
20235,270億ドル-8.2%
20246,110億ドル(予測)+16.0%
20256,970億ドル(予測)+14.1%
20301兆ドル(予測)-

2023年は一時的に市場が縮小しましたが、これは2021〜2022年のコロナ特需の反動と在庫調整によるものです。2024年以降はAI需要を中心に力強い回復 が見込まれています。


5大成長ドライバー

半導体市場の成長を牽引する5つの要因を見ていきましょう。

5大成長ドライバー

1. AI / 生成AI(最重要)

2023年のChatGPTブーム以降、生成AIの需要が爆発的に拡大 しています。

  • GPU(画像処理半導体):AIの学習・推論に不可欠
  • HBM(高帯域幅メモリ):GPUの性能を引き出す超高速メモリ

NVIDIAのAI向けGPUは需要に供給が追いつかず、データセンター向け売上は前年比3倍以上に急増しています。

2. EV / 電動化

電気自動車(EV)の普及により、パワー半導体 の需要が急増しています。

  • 1台のEVには約50個のパワー半導体 が搭載
  • 電力変換効率の向上が航続距離に直結
  • 自動運転の進化で車載SoCの需要も拡大

3. データセンター

クラウドサービスとビッグデータの成長により、データセンターへの投資が続いています。

  • サーバー向け高性能CPU
  • AI処理用GPU
  • 大容量メモリ(DRAM、SSD)

4. 5G / 通信

5G通信の普及により、通信関連の半導体需要が増加しています。

  • RF半導体:高周波信号の送受信
  • ベースバンドチップ:通信の制御

5. IoT

あらゆるモノがインターネットにつながる時代、IoTデバイス向けの半導体需要も拡大しています。

  • MCU(マイコン):小型機器の制御
  • センサー:温度、湿度、動きの検知
  • 低消費電力チップ:バッテリー駆動デバイス向け

半導体の微細化とムーアの法則

半導体産業の発展を支えてきたのが、微細化(プロセスノードの縮小)です。

半導体の微細化トレンド

プロセスノードとは?

プロセスノード(例:7nm、3nm)は、半導体チップ上に形成できる回路の細かさを示す指標です。数字が小さいほど

  • より多くのトランジスタを搭載できる → 高性能
  • 電子の移動距離が短くなる → 省電力

ムーアの法則

インテル創業者のゴードン・ムーアが1965年に提唱した法則:

「半導体の集積密度は約2年で2倍になる」

この法則は約60年にわたって半導体産業の進歩を支えてきました。近年は物理的限界に近づいていると言われますが、新しい技術(3D積層、新材料など)により、性能向上は続いています。

最先端プロセスの現状

プロセス特徴
20207nmEUV露光本格導入
20233nm現在の最先端
20252nm次世代(量産開始予定)

最先端の3nmプロセスでは、髪の毛の太さ(約80,000nm)の約27,000分の1 という極めて微細な回路が形成されています。


なぜ今、半導体を理解すべきか?

なぜ半導体が重要か

1. 投資機会の拡大

半導体関連株は、AI時代の成長を取り込める有望な投資先です。

  • NVIDIA:AI向けGPUで独走
  • AMD:データセンター向けCPUで躍進
  • TSMC:最先端製造を独占

2. 地政学的重要性

米中対立の中心にあるのが半導体です。

  • 米国:対中輸出規制、CHIPS法で国内製造強化
  • 中国:内製化を推進
  • 台湾:TSMC(世界シェア67%)を抱える戦略的要衝

3. 社会インフラとしての重要性

AIの発展、EVの普及、デジタル化の進展——すべての基盤に半導体があります。半導体を理解することは、未来の社会を理解すること につながります。


まとめ

本記事では、半導体の基礎と市場の全体像を解説しました。

ポイント:

  • 半導体は「条件次第で電気を通す」特性を持ち、電子機器の制御に不可欠
  • 市場規模は2024年に約6,000億ドル、2030年には1兆ドルへ
  • 5大成長ドライバー:AI、EV、データセンター、5G、IoT
  • 微細化により性能向上と省電力化が進む
  • 投資、地政学、社会インフラの観点から重要性が増している

次回は「半導体の種類を理解する - ロジック・メモリ・アナログ・パワー」と題して、半導体の4大カテゴリについて詳しく解説します。


シリーズ目次

  1. 半導体とは何か - 1兆ドル市場の全体像(本記事)
  2. 半導体の種類を理解する - ロジック・メモリ・アナログ・パワー
  3. プロセッサの世界 - CPU・GPU・SoC・FPGA・ASIC
  4. サプライチェーンを読み解く - 設計から製造まで
  5. ビジネスモデル3類型 - IDM・ファブレス・ファウンドリ
  6. 主要企業徹底解説 - 誰が何を支配しているか
  7. AI時代の半導体と地政学 - 投資家が知るべきリスク
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