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【半導体マスター講座 第2回】半導体の種類を理解する - ロジック・メモリ・アナログ・パワー

半導体は機能によってロジック、メモリ、アナログ、パワーの4種類に分類されます。それぞれの役割と代表製品、主要企業を解説し、投資判断に活かせる知識を身につけましょう。

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半導体マスター講座
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はじめに

前回は半導体の基礎と市場の全体像を解説しました。今回は、半導体を機能別に4つのカテゴリ に分類し、それぞれの役割と用途を理解していきます。

「ロジック半導体」「メモリ半導体」という言葉を聞いたことがある方も多いでしょう。しかし、その違いを明確に説明できる人は少ないかもしれません。

この4つのカテゴリを理解することで、半導体企業への投資判断がより明確になります。NVIDIAとMicronは何が違うのか、なぜTexas Instrumentsは安定した収益を上げられるのか——その答えがここにあります。


半導体の4大カテゴリ

半導体は、その機能によって大きく4つに分類されます。

半導体の4大カテゴリ

カテゴリ役割人間に例えると代表製品
ロジック演算・制御CPU、GPU、SoC
メモリデータ記憶記憶DRAM、NAND
アナログ信号変換五感センサー、電源IC
パワー電力制御筋肉IGBT、MOSFET

それぞれのカテゴリを詳しく見ていきましょう。


ロジック半導体 - デジタル世界の「頭脳」

ロジック半導体

ロジック半導体とは?

ロジック半導体は、デジタル信号(0と1)を処理して演算や制御を行う 半導体です。コンピュータの「頭脳」にあたる最も重要なカテゴリです。

主な製品

製品説明用途
CPUCentral Processing Unit(中央演算処理装置)PC、サーバー
GPUGraphics Processing Unit(画像処理装置)ゲーム、AI、データセンター
SoCSystem on Chip(複数機能を1チップに統合)スマートフォン、IoT
FPGAField Programmable Gate Array(書き換え可能)試作、少量生産
ASICApplication Specific IC(特定用途専用)暗号通貨マイニング、AI推論

市場シェアと主要企業

企業主力製品強み
NVIDIAGPU(データセンター、AI)AIチップで90%超のシェア
IntelCPU(PC、サーバー)長年のブランド力
AMDCPU、GPUコストパフォーマンス
QualcommモバイルSoC(Snapdragon)5G特許、モバイル市場
Broadcom通信・カスタムチップM&Aによる多角化

ポイント

投資のポイント

ロジック半導体は半導体市場の約40% を占める最大のカテゴリです。AI時代にはGPU需要が急増しており、NVIDIAが独走しています。一方、CPUはIntelとAMDの激しい競争が続いています。

なぜGPUがAI時代に重要なのか?

CPUは「逐次処理」に優れ、複雑なタスクを1つずつ高速に処理します。一方、GPUは「並列処理」に優れ、単純な計算を大量に同時実行 できます。

AIの学習(トレーニング)では、膨大な行列計算が必要です。この処理にはGPUの並列処理能力が最適なのです。

比較CPUGPU
コア数数個〜数十個数千〜数万個
得意な処理複雑な逐次処理単純な並列処理
AI学習非効率最適

メモリ半導体 - データを記憶する「倉庫」

メモリ半導体

メモリ半導体とは?

メモリ半導体は、データを一時的または永続的に保存する 半導体です。ロジック半導体が処理したデータを保管する「倉庫」の役割を果たします。

DRAMとNANDの違い

メモリ半導体は大きく2種類に分かれます。

種類特徴用途例え
DRAM高速だが揮発性(電源OFFで消える)作業メモリ作業机
NAND低速だが不揮発性(電源OFFでも保持)長期保存本棚
  • DRAM:パソコンのメモリ(RAM)、スマホのメモリ
  • NAND:SSD、USBメモリ、SDカード

HBM - AI時代の注目メモリ

HBM(High Bandwidth Memory) は、DRAMを積層した超高速メモリです。NVIDIAのAI向けGPU(H100、H200など)に搭載され、膨大なデータを高速でやり取りします。

メモリタイプ帯域幅(目安)用途
DDR5約50GB/s一般PC
GDDR6約500GB/sゲーミングGPU
HBM3約800GB/sAI GPU
HBM3E約1TB/s超最新AI GPU

主要企業

企業拠点強み
Samsung韓国DRAM・NANDともにシェア1位
SK Hynix韓国HBMのリーダー、NVIDIAと密接
Micron米国米国唯一のメモリ大手、HBM3Eで追い上げ

注意

メモリ市場の特徴:シリコンサイクル

メモリ半導体は需給バランスで価格が大きく変動します。好況時は値上がりし、不況時は暴落する「シリコンサイクル」があるため、投資タイミングが重要です。2023年は在庫調整で苦境でしたが、2024年はAI需要で回復しています。


アナログ半導体 - 現実世界との「架け橋」

アナログ半導体

アナログ半導体とは?

アナログ半導体は、温度、光、音などの連続的な信号を処理する 半導体です。現実世界(アナログ)とデジタル世界の「翻訳機」として機能します。

デジタルとアナログの違い

信号タイプ特徴
デジタル0か1の離散値コンピュータ内部
アナログ連続的な値温度、音、光

私たちの世界はアナログです。気温は「25.3度」のように連続的に変化し、音も波形として連続しています。これをデジタル(0と1)に変換するのがアナログ半導体の役割です。

主な製品

製品役割用途
ADCアナログ→デジタル変換センサー信号のデジタル化
DACデジタル→アナログ変換スピーカー出力
電源IC電圧変換・安定化あらゆる電子機器
アンプIC信号増幅オーディオ、通信
センサー物理量の検出温度、光、加速度

主要企業

企業強み
Texas Instruments (TI)アナログ最大手、幅広い製品ポートフォリオ
Analog Devices高精度アナログ、産業向け
NXP自動車向け、セキュリティ
ON Semiconductorパワー・センサー

ポイント

投資のポイント

アナログ半導体は製品寿命が長く、価格競争が緩やか です。最先端プロセスが不要で、10年以上前の製品が現役で売れ続けることもあります。Texas Instrumentsは安定した利益率で知られ、配当投資家にも人気 があります。


パワー半導体 - 電力を制御する「筋肉」

パワー半導体

パワー半導体とは?

パワー半導体は、電力の変換や制御を行う 半導体です。高い電圧・電流を扱うため、「筋肉」に例えられます。

主な役割

  1. 電圧変換:100Vを5Vに下げる(ACアダプター)
  2. 直流/交流変換:太陽光発電の直流を家庭用交流に
  3. モーター制御:EVのモーターを精密に制御

EVで需要急増

電気自動車(EV)では、パワー半導体が特に重要 です。

用途役割重要性
インバーターバッテリー直流→モーター交流EV走行の要
DC-DCコンバーター電圧調整車内機器への電力供給
充電器交流→直流変換充電効率

1台のEVには約50個のパワー半導体 が搭載されます。内燃機関車の数倍にあたり、EV普及に伴い需要が急増しています。

材料による違い:SiとSiC、GaN

従来はシリコン(Si)が主流でしたが、SiC(シリコンカーバイド)GaN(窒化ガリウム) など新材料が登場しています。

材料特徴用途
Si低コスト、汎用従来用途全般
SiC高耐圧・低損失EV、産業機器
GaN高周波・高効率充電器、通信

SiCはEVのインバーターで採用が進んでおり、航続距離を約10%延ばせるとされています。

主要企業

企業拠点強み
Infineonドイツパワー半導体世界1位
ON Semiconductor米国SiC注力、EV向け
STMicroelectronics欧州自動車向け
Wolfspeed米国SiC専業、ウエハー製造も

注意

パワー半導体市場の特徴

パワー半導体はロジックやメモリと異なり、最先端の微細化が不要 です。そのため、技術的な参入障壁はやや低めですが、品質と信頼性が極めて重要です。自動車向けでは10年以上の長期供給が求められます。


4つのカテゴリが連携して動く

実際の電子機器では、4種類の半導体が連携して動作しています。スマートフォンを例に見てみましょう。

スマートフォンでの4種類の連携

スマートフォンでの役割分担

カテゴリ製品例役割
ロジックSoC(Snapdragon, A17など)アプリ処理、画面描画
メモリDRAM、NANDデータ一時保存、写真・アプリ保存
アナログカメラセンサー、電源IC写真撮影、電源管理
パワー充電IC、バッテリー管理急速充電、電力配分

写真を撮る流れを追うと:

  1. アナログ:カメラセンサーが光を検知し、デジタル信号に変換
  2. ロジック:SoCが画像処理(AI補正など)を実行
  3. メモリ:DRAMに一時保存、NANDに永久保存
  4. パワー:処理中の電力を安定供給

すべてのカテゴリが連携することで、スマートフォンは機能しています。


市場規模の比較

各カテゴリの市場規模と成長率を比較しましょう。

カテゴリ市場シェア(2024年)成長ドライバー
ロジック約40%AI、データセンター
メモリ約25%HBM、AI GPU
アナログ約15%IoT、産業
パワー約10%EV、再生可能エネルギー
その他約10%通信、センサー

ロジックとメモリで市場の約65% を占めます。特にAI時代にはGPU(ロジック)とHBM(メモリ)の需要が急増しています。


投資視点でのカテゴリ別特徴

カテゴリ成長性安定性景気敏感度代表銘柄
ロジック高いNVIDIA, AMD
メモリ×非常に高いMicron
アナログ中程度Texas Instruments
パワー中程度ON Semiconductor
  • 成長重視:ロジック半導体(特にAI関連)
  • 安定重視:アナログ半導体(TIの配当利回りに注目)
  • 景気回復局面:メモリ半導体(シリコンサイクルの谷で買い)
  • テーマ投資:パワー半導体(EV普及に連動)

まとめ

本記事では、半導体の4大カテゴリを解説しました。

ポイント:

  • ロジック:演算・制御を担う「頭脳」。CPU、GPU、SoCが代表
  • メモリ:データ記憶を担う「倉庫」。DRAM(作業用)とNAND(保存用)
  • アナログ:信号変換を担う「五感」。センサー、電源ICが代表
  • パワー:電力制御を担う「筋肉」。EVで需要急増

投資視点:

  • ロジック(NVIDIA、AMD)は成長性が高いが変動も大きい
  • メモリ(Micron)はシリコンサイクルに注意
  • アナログ(TI)は安定配当狙いに適する
  • パワー(ON Semi)はEVテーマで注目

次回は「プロセッサの世界 - CPU・GPU・SoC・FPGA・ASIC」と題して、ロジック半導体の中でも特に重要なプロセッサについて詳しく解説します。なぜAI時代にGPUが主役になったのか、その理由を深掘りします。


シリーズ目次

  1. 半導体とは何か - 1兆ドル市場の全体像
  2. 半導体の種類を理解する - ロジック・メモリ・アナログ・パワー(本記事)
  3. プロセッサの世界 - CPU・GPU・SoC・FPGA・ASIC
  4. サプライチェーンを読み解く - 設計から製造まで
  5. ビジネスモデル3類型 - IDM・ファブレス・ファウンドリ
  6. 主要企業徹底解説 - 誰が何を支配しているか
  7. AI時代の半導体と地政学 - 投資家が知るべきリスク
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