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【SEC開示を読み解く 第3回】13F・13D・13G - 機関投資家を追う

ヘッジファンドや著名投資家のポートフォリオを追跡する方法を解説。13Fファイリングの読み方、バフェットやレイ・ダリオの保有銘柄の調べ方、13D/13Gの違いを学びます。

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SEC開示マスター講座
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この記事で学ぶこと

  • 13F・13D・13Gの違いと役割
  • 13Fファイリングの読み方と分析手順
  • 著名投資家(バフェット、ダリオ等)の追跡方法
  • 13Fの限界と注意点
  • 13Dが意味するアクティビストの動き

なぜ機関投資家を追うのか?

米国株式市場の取引量の約70〜80%は機関投資家によるものです。彼らの動きを知ることは、市場の方向性を読む上で非常に重要です。

機関投資家を追跡するメリット:

  • スマートマネーの投資先がわかる:プロが何に注目しているか
  • アイデアの発掘:自分では見つけられなかった銘柄との出会い
  • 確信度の確認:自分の投資判断の裏付け
  • 市場の需給を読む:大口の買い・売り圧力の把握

SECは機関投資家に対して保有状況の開示を義務付けています。これを活用しない手はありません。


13F・13D・13Gの違い

機関投資家の開示には主に3つのフォームがあります。それぞれ目的と対象が異なります。

13F・13D・13G比較

比較表

項目13F13D13G
対象運用資産1億ドル超5%超保有(アクティビスト)5%超保有(パッシブ)
頻度四半期ごと取得後10日以内取得後10日以内
期限45日以内10日以内10日以内
内容ロングポジション一覧保有目的、企業への計画基本的な保有情報のみ
意図開示義務積極介入受動保有

ヒント

13Dを提出した投資家がパッシブ投資家に転換する場合、13Gに切り替えることがあります。逆に、13Gから13Dへの切り替えは「アクティビストに転向した」サインです。


13F:機関投資家の保有開示

13Fは、運用資産1億ドル(約150億円)以上の機関投資家が四半期ごとに提出する保有報告書です。ヘッジファンド、ミューチュアルファンド、年金基金、保険会社などが対象となります。

13Fでわかること

  • 保有銘柄の一覧
  • 各銘柄の株数
  • 各銘柄の時価総額
  • 前四半期からの増減

13Fでわからないこと

  • ショートポジション(空売り)
  • オプション・デリバティブの詳細
  • なぜその銘柄を買ったのか(投資理由)
  • 四半期中の売買(期末時点のスナップショットのみ)

13Fの分析フロー

13Fを効果的に分析するための5つのステップを紹介します。

13F分析フロー

Step 1:ファンドを特定

まず、追跡したいファンドを決めます。バフェットのBerkshire Hathaway、レイ・ダリオのBridgewater Associates、ビル・アックマンのPershing Squareなど、著名投資家のファンドから始めるのがおすすめです。

Step 2:新規ポジションを確認

最も重要なのは新規ポジションです。「何を新たに買い始めたか?」は、そのファンドが新たに注目しているセクターやテーマを示しています。

Step 3:増減を確認

既存ポジションの増減も重要です。

  • 大幅増加:確信度が高まっている
  • 維持:見解に変化なし
  • 一部売却:利益確定 or 確信度低下
  • 大幅減少:投資テーマの見直し

Step 4:完全売却を確認

完全売却(Sold Out)は、そのファンドがその銘柄への投資テーマを終了したことを意味します。なぜ手放したのか、考察する価値があります。

Step 5:複数ファンドをクロス分析

1つのファンドだけでなく、複数のファンドが同時に買っている銘柄を探しましょう。スマートマネーのコンセンサスが形成されている可能性があります。


追跡すべき著名投資家

13Fで追跡できる著名投資家を紹介します。それぞれ投資スタイルが異なるため、スタイルを理解した上で参考にしましょう。

著名投資家一覧

Warren Buffett(Berkshire Hathaway)

項目内容
運用資産約3,000億ドル
スタイルバリュー・長期保有
特徴「素晴らしい企業を適正価格で」
注目点新規ポジション、Apple以外の動き

バフェットの投資は長期的な視点が特徴です。彼が新たに買い始めた銘柄は、数年単位で保有する可能性が高いです。

Michael Burry(Scion Asset Management)

項目内容
運用資産約2〜3億ドル
スタイル逆張り・マクロ
特徴「ビッグショート」で有名
注目点逆張りポジション、市場への警告

バーリーは逆張り投資家として知られています。彼のポジションは市場のコンセンサスとは異なることが多いです。

Bill Ackman(Pershing Square)

項目内容
運用資産約100億ドル
スタイルアクティビスト・集中投資
特徴少数銘柄に大きく賭ける
注目点新規ポジション、13D提出

アックマンはアクティビスト投資家です。彼が大きなポジションを取った企業は、経営への介入が行われる可能性があります。

Ray Dalio(Bridgewater Associates)

項目内容
運用資産約1,500億ドル
スタイルオールウェザー・マクロ
特徴世界最大のヘッジファンド
注目点セクター配分、ETFの動き

ダリオのオールウェザー戦略は、あらゆる経済環境で安定したリターンを目指します。彼のポートフォリオはマクロ経済の見通しを反映しています。

David Tepper(Appaloosa Management)

項目内容
運用資産約150億ドル
スタイルマクロ・ディストレスト
特徴景気サイクルを読む達人
注目点セクターローテーション

テッパーは景気サイクルを読むのが得意な投資家です。彼のポジション変更は、マクロ経済の転換点を示唆することがあります。

Cathie Wood(ARK Invest)

項目内容
運用資産約100億ドル
スタイル破壊的イノベーション
特徴テスラ、AI、バイオテックに集中
注目点新興テクノロジー銘柄

キャシー・ウッドは破壊的イノベーションに投資することで知られています。彼女のポートフォリオはハイリスク・ハイリターンです。

重要

著名投資家を追跡する際は、彼らの投資スタイルを理解することが重要です。バリュー投資家の銘柄をグロース投資家の視点で評価しても意味がありません。


13Fの限界と注意点

13Fは非常に有用なツールですが、限界を理解した上で活用することが重要です。

13Fの限界

1. 45日の遅れ

13Fは四半期末から45日以内に提出されます。つまり、3月末のポートフォリオが公開されるのは5月中旬です。

その間に:

  • すでに売却済みの可能性
  • ポジションサイズが大きく変わっている可能性
  • 市場環境が変化している可能性

2. ショート非開示

13Fはロングポジションのみを開示します。空売り(ショート)ポジションは見えません。

これは氷山の一角と同じで、水面下に何があるかはわかりません。特にヘッジファンドはロング・ショート戦略を取ることが多いため、13Fだけでは全体像が見えません。

3. スナップショット

13Fは四半期末時点のスナップショットです。期中の売買は見えません。

例えば、あるファンドが1月に大量に買い、2月に半分売り、3月末時点で保有している場合、13Fには3月末時点の保有数のみが記載されます。

4. 投資理由不明

なぜその銘柄を買ったのかは13Fには書かれていません。バリュエーション判断は自分で行う必要があります。

著名投資家が買ったからといって、その銘柄が今の価格で買い時かどうかはわかりません。

注意

盲目的なコピーは危険です。13Fは参考情報として活用し、最終的な投資判断は自分で行いましょう。


13D:アクティビスト投資家のサイン

13Dは、企業の株式を5%以上取得し、かつ経営に影響を与える意図がある場合に提出されるフォームです。

13Dの意味

13Dに含まれる情報

  • 取得者の身元:誰が買ったか
  • 資金の出所:自己資金か借入か
  • 保有目的:なぜ買ったか
  • 企業への計画:何をするつもりか

13D提出後に起こりうること

1. 取締役派遣

投資家が取締役会に自らの代表者を送り込み、経営に参画します。

2. 経営陣交代要求

現経営陣の退陣を求め、新たな経営者を擁立します。

3. M&A・スピンオフ

企業の買収、または事業の分離・売却を要求します。

13Dの読み方

13Dの「Item 4: Purpose of Transaction」セクションに注目しましょう。ここに投資家の意図が書かれています。

  • "passive investment"と書かれていても注意:後から方針を変更することがある
  • 具体的な計画が書かれている場合:株価に大きな影響を与える可能性
  • "engage with management":経営陣との対話を予定

ヒント

13D提出は企業に変化を起こす意思表明です。アクティビストが入った企業は、良くも悪くも大きな変化が起こる可能性があります。


13G:パッシブ投資家の開示

13Gは、5%以上を保有するが経営に介入する意図がない場合に提出されるフォームです。13Dよりも簡易な開示で済みます。

13Gを提出できる投資家

  • Qualified Institutional Investors(QII):銀行、保険会社など
  • Passive Investors:投資目的のみで経営介入の意図なし
  • Exempt Investors:IPO前から保有している投資家

13Gから13Dへの切り替え

パッシブ投資家が方針を変更し、経営に介入する意図を持った場合、13Gから13Dへの切り替えが必要です。

この切り替えは「アクティビストに転向した」サインとして市場で注目されます。


13F分析ツール

13Fを効率的に分析するためのツールを紹介します。

13F分析ツール

WhaleWisdom

項目内容
URLwhalewisdom.com
特徴13F検索・分析に特化
機能ファンド比較、保有履歴、ヒートマップ
料金基本無料(プレミアム機能あり)

WhaleWisdomは13F分析の定番ツールです。複数ファンドの比較や、特定銘柄を保有するファンドの一覧表示が簡単にできます。

Dataroma

項目内容
URLdataroma.com
特徴スーパーインベスター追跡
機能バフェット等の最新保有、買い増し銘柄
料金完全無料

Dataromaは完全無料で著名投資家のポートフォリオを追跡できます。シンプルなUIで使いやすいです。

Fintel

項目内容
URLfintel.io
特徴機関投資家保有比率
機能銘柄ごとの機関保有分析
料金基本無料(詳細は有料)

Fintelは特定銘柄について、どの機関投資家が保有しているかを調べるのに便利です。

SEC EDGAR

項目内容
URLsec.gov/edgar
特徴公式・無料・最速
機能原本の閲覧
料金完全無料

最終的な確認はSEC EDGARで原本を閲覧しましょう。サードパーティツールにはデータの誤りがある可能性があります。


実践:バフェットのポートフォリオを調べる

実際にウォーレン・バフェットのBerkshire Hathawayの13Fを調べてみましょう。

Step 1:SEC EDGARにアクセス

  1. SEC EDGARにアクセス
  2. 「Berkshire Hathaway」で検索
  3. 「13F-HR」でフィルター

Step 2:最新の13Fを開く

最新の「13F-HR」をクリックし、「13F-HR」または「INFORMATION TABLE」を選択します。

Step 3:保有銘柄を確認

以下の情報が表示されます:

  • NAME OF ISSUER:銘柄名
  • SHARES:株数
  • VALUE:時価(千ドル単位)

Step 4:前四半期と比較

前四半期の13Fと比較して、以下をチェック:

  • 新規ポジション(NEW)
  • 買い増し(ADD)
  • 売却(REDUCE / SOLD OUT)

まとめ

この記事のポイント

  • 13Fは運用資産1億ドル超の機関投資家が四半期ごとに提出
  • 13Dは5%超保有のアクティビスト投資家が提出
  • 13Gは5%超保有のパッシブ投資家が提出
  • 著名投資家を追跡する際は投資スタイルを理解してから
  • 13Fには45日の遅れショート非開示などの限界がある
  • 盲目的なコピーは危険。参考情報として活用する

次回予告

第4回では、Form 3・4・5を解説します。CEO、CFO、取締役など企業インサイダーの株式売買を追跡し、「買いシグナル」を見つける方法を学びましょう。


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