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【金利マスター講座 第4回】イールドカーブを読む - 景気予測の羅針盤

イールドカーブ(利回り曲線)の見方を解説。順イールド、逆イールド、フラット化・スティープ化の意味と、景気予測への活用方法を学びます。

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この記事で学ぶこと

  • イールドカーブとは何か
  • 順イールド(正常な形状)の意味
  • 逆イールド(景気後退のサイン)の意味
  • フラット化とスティープ化
  • イールドカーブから読み取れる市場の期待

イールドカーブとは

イールドカーブ(Yield Curve)は、債券の残存期間(満期までの年数)と利回りの関係をグラフ化したもの です。日本語では「利回り曲線」とも呼ばれます。

イールドカーブの見方

横軸に残存期間(1年、2年、5年、10年、30年など)、縦軸に 利回りをとってプロットします。

なぜイールドカーブが重要なのか

イールドカーブは以下の情報を教えてくれます。

情報説明
市場の金利予想将来の金利がどう動くか、市場参加者の予想が反映される
景気の見通し景気拡大・後退の予兆を示すことがある
インフレ期待将来のインフレに対する市場の見方がわかる
金融政策の効果中央銀行の政策が市場にどう影響しているかがわかる

イールドカーブは「市場の集合知」であり、多くの投資家が注目する重要な指標です。


順イールド(正常な形状)

順イールドとは

順イールド(Normal Yield Curve) は、残存期間が長くなるほど利回りが高くなる、右上がりの形状 です。

これが「正常」とされる理由は、第2回で解説した期間プレミアム流動性プレミアム があるからです。

順イールドの背景

要因説明
期間プレミアム長期間お金を貸すリスク(金利変動、インフレ)への上乗せ
流動性プレミアム長期間資金が拘束されることへの対価
将来の利上げ期待景気拡大が続き、将来金利が上がると予想される場合

順イールドが示す市場の見方

  • 景気は拡大基調 にある
  • インフレはある程度上昇 する見通し
  • 中央銀行は将来利上げ する可能性がある
  • 経済は正常に機能 している

日本のイールドカーブ(2024年末時点の例)

残存期間利回り
1年0.30%
2年0.55%
5年0.70%
10年1.05%
20年1.85%
30年2.25%

日本のイールドカーブは順イールドの形状ですが、全体的な水準は低く、長短金利差(スプレッド)も比較的小さい状態です。


逆イールド(景気後退のサイン)

逆イールドとは

逆イールド(Inverted Yield Curve) は、残存期間が長くなるほど利回りが低くなる、右下がりの形状 です。

通常とは逆の形状であり、異常事態 を示すサインとされます。

逆イールドが発生する理由

要因説明
景気後退の予想将来景気が悪化し、中央銀行が利下げすると予想
インフレ低下の予想将来インフレが落ち着くと予想
短期金利の急上昇中央銀行が急速に利上げした直後
長期債への逃避安全資産として長期国債が買われ、長期金利が低下

逆イールドと景気後退の関係

米国では、逆イールドは景気後退(リセッション)の先行指標 として有名です。

逆イールドは景気後退の先行指標

過去50年間、米国で逆イールドが発生した後、すべてのケースで景気後退が起きています。ただし、発生までのタイムラグは6ヶ月〜2年とばらつきがあります。

注意

逆イールドは過去50年間、米国の景気後退をすべて予告しています。ただし発生までのタイムラグがあるため、タイミングを正確に予測することは困難です。

注目される「2年-10年スプレッド」

逆イールドを判断する際、最もよく使われるのが2年国債と10年国債の利回り差(2s10sスプレッド) です。

2s10sスプレッド = 10年国債利回り − 2年国債利回り
  • プラス: 順イールド(正常)
  • ゼロ: フラット
  • マイナス: 逆イールド(警戒シグナル)

ヒント

2s10sスプレッドは多くの経済サイト(FRED、Investing.comなど)で無料で確認できます。定期的にチェックする習慣をつけましょう。

米国では2022年から2024年にかけて逆イールドが続き、市場は景気後退を警戒していました。

【実例】2022-2024年米国の逆イールド—景気後退は来たのか?

2022年、米国では歴史的な逆イールドが発生しました。リアルタイムでどのように推移したか見てみましょう。

2s10sスプレッドの推移
時期2年金利10年金利スプレッド状態
2022年3月2.3%2.4%+0.1%ほぼフラット
2022年7月3.0%2.8%−0.2%逆イールド発生
2023年3月4.0%3.4%−0.6%逆イールド深化
2023年7月4.9%3.9%−1.0%過去最大級の逆転
2024年9月3.6%3.7%+0.1%逆イールド解消

FRBの急速な利上げで短期金利が急騰し、2年金利が10年金利を上回る状態が約2年間 続きました。

市場では何が起きたか
予想されていたこと実際に起きたこと
景気後退(リセッション)2024年末時点で回避(ソフトランディング)
失業率の上昇緩やかな上昇にとどまる(3.4%→4.2%)
株価下落2022年は下落、2023-2024年は上昇

過去の逆イールドはすべて景気後退につながりましたが、今回は「ソフトランディング」が実現しつつあります。ただし、逆イールド解消後に景気後退が来るケースもあるため、まだ油断はできません。

教訓
  • 逆イールドはシグナルであって確定ではない
  • 中央銀行の対応次第で景気後退は回避できる可能性がある
  • ただし、警戒シグナルとしての価値は依然として高い

逆イールドの注意点

逆イールドは景気後退のサインですが、以下の点に注意が必要です。

  1. タイムラグがある: 逆イールド発生から景気後退までは6ヶ月〜2年の幅がある
  2. 必ずしも当たるわけではない: 他の要因(中央銀行の政策変更など)で回避されることもある
  3. 株価は先に動く: 逆イールドが解消する頃には株価がすでに下落していることも

フラット化とスティープ化

イールドカーブは静的なものではなく、常に変動しています。その変動パターンを理解することが重要です。

フラット化(Flattening)

フラット化 とは、長短金利差が縮小し、イールドカーブが平坦になる 動きです。

フラット化の2つのパターン
パターン動き背景
ベアフラット短期金利が上昇、長期金利はあまり動かない利上げ期待。景気拡大の終盤
ブルフラット長期金利が低下、短期金利はあまり動かない景気後退懸念。長期債への逃避
フラット化が示すもの
  • 景気拡大局面の終盤
  • 中央銀行の利上げサイクル が進行中
  • 将来の景気に対する慎重な見方

スティープ化(Steepening)

スティープ化 とは、長短金利差が拡大し、イールドカーブが急勾配になる 動きです。

スティープ化の2つのパターン
パターン動き背景
ベアスティープ長期金利が上昇、短期金利はあまり動かないインフレ期待上昇、景気回復期待
ブルスティープ短期金利が低下、長期金利はあまり動かない利下げ期待。景気後退からの回復初期
スティープ化が示すもの
  • 景気回復局面
  • 中央銀行の利下げサイクル が進行中
  • 将来の成長やインフレに対する楽観的な見方

イールドカーブから読み取れること

イールドカーブと景気サイクル

イールドカーブの形状は、景気サイクルの局面を反映します。

景気局面イールドカーブ特徴
回復期スティープ化短期金利低い、長期金利上昇。利下げ後の回復
拡大期順イールド正常な右上がり。金利全般が上昇傾向
成熟期フラット化長短金利差が縮小。利上げサイクル終盤
後退期逆イールド→スティープ化逆イールド発生後、利下げでスティープ化

日米のイールドカーブ比較

日本と米国のイールドカーブを比較することで、両国の経済状況の違いがわかります。

2024年末時点の比較
残存期間日本米国差(米国−日本)
2年0.55%4.25%3.70%
10年1.05%4.50%3.45%
30年2.25%4.70%2.45%

米国の方が全般的に金利が高く、これが円安ドル高 の一因となっています。

イールドカーブの活用方法

投資判断への活用
イールドカーブの状態投資への示唆
順イールド(スティープ)リスク資産(株式)に有利。景気拡大期待
フラット化進行景気のピークが近い可能性。慎重に
逆イールド景気後退に備える。ディフェンシブ銘柄、債券を検討
逆イールド解消・スティープ化景気底打ちの可能性。リスク資産への回帰を検討
債券投資への活用
戦略説明
ブルフラット予想時長期債を買う(金利低下で価格上昇)
ベアスティープ予想時短期債を買う(長期債の価格下落リスク回避)
ロールダウン戦略順イールド時、債券を保有し続けると時間経過で利回りが低下(価格上昇)

イールドカーブを確認する方法

情報源

サイト・ツール特徴
財務省ウェブサイト日本国債の金利情報(公式)
日本証券業協会公社債の利回り情報
Bloomberg各国のイールドカーブを比較可能
Investing.comリアルタイムのイールドカーブ表示
FRED(St. Louis Fed)米国のイールドカーブの過去データ

見るべきポイント

  1. 形状: 順イールド?逆イールド?フラット?
  2. 傾き: スティープ?フラット?
  3. 変化の方向: フラット化進行中?スティープ化進行中?
  4. 過去との比較: 1ヶ月前、1年前と比べてどう変化したか?

まとめ

イールドカーブの基本

  • 債券の残存期間と利回りの関係 をグラフ化したもの
  • 市場の金利予想、景気見通し、インフレ期待 を反映

イールドカーブの形状

形状意味
順イールド正常な形状。景気拡大期に多い
逆イールド異常な形状。景気後退の先行指標
フラット長短金利差が縮小。景気の転換点の可能性

変化のパターン

変化意味
フラット化長短金利差の縮小。景気拡大の終盤
スティープ化長短金利差の拡大。景気回復の初期

投資への活用

  • 逆イールド: 景気後退に備えてディフェンシブに
  • スティープ化: 景気回復を見越してリスク資産へ
  • 2s10sスプレッド を定期的にチェック

次回は、金利と株式市場・為替市場の関係について解説します。


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