
この記事で学ぶこと
- 債券とは何か、株式との違い
- 信用格付けの仕組み(投資適格債 vs ジャンク債)
- スプレッドとは何か、なぜ重要なのか
- スプレッドの縮小・拡大が示す市場心理
- Fear & Greed Indexの「Junk Bond Demand」の読み方
「ジャンク債スプレッドが縮小=強欲」とは?
CNNの「Fear & Greed Index」を見ると、7つの指標の1つにJunk Bond Demand(ジャンク債需要)があります。
この指標は「ジャンク債と投資適格債のスプレッドが狭い=強欲(Greed)」と判定されます。
しかし、これを理解するには、まず以下の疑問を解消する必要があります:
- そもそも債券って何?
- ジャンク債、投資適格債って何?
- スプレッドって何?
- なぜスプレッドが狭いと「強欲」なの?
順を追って解説していきます。
債券とは何か?株式との違い
まず「債券」の基本を理解しましょう。

債券=お金を「貸す」こと
債券(Bond)とは、国や企業にお金を貸すことです。
お金を貸す代わりに:
- 定期的に利息(クーポン)を受け取れる
- 満期が来たら元本が返ってくる
銀行にお金を預けると利息がもらえるのと同じ仕組みです。ただし、相手が銀行ではなく「国」や「企業」になります。
株式=会社を「所有する」こと
一方、株式(Stock)は会社の一部を所有することです。
株主として:
- 会社が成長すれば株価が上がる(キャピタルゲイン)
- 配当金を受け取れることもある
- ただし、会社が倒産すれば価値はゼロになる
債券と株式の比較
| 項目 | 債券(Bond) | 株式(Stock) |
|---|---|---|
| 立場 | 貸し手(Lender) | 所有者(Owner) |
| 主な収益 | 利息(固定) | 株価上昇・配当 |
| リスク | 比較的低い | 比較的高い |
| 元本 | 満期時に返済される | 保証なし |
| 会社倒産時 | 株主より優先的に返済 | 最後(残余財産) |
ヒント
債券は「貸す」、株式は「所有する」。この違いを理解することが、債券投資の第一歩です。
信用格付けとは?会社の「成績表」
お金を貸すとき、最も気になるのは「ちゃんと返してもらえるか?」ということ。
この「返済能力」を評価したのが信用格付け(Credit Rating)です。
格付け機関
世界的に有名な格付け機関は以下の3社です:
- S&P(スタンダード・アンド・プアーズ)
- Moody's(ムーディーズ)
- Fitch(フィッチ)
これらの機関が、国や企業の財務状況を分析し、「債務を返済する能力」を評価します。
格付けの一覧

| S&P | Moody's | 評価 |
|---|---|---|
| AAA | Aaa | 最高の信用力 |
| AA | Aa | 非常に高い信用力 |
| A | A | 高い信用力 |
| BBB | Baa | 適切な信用力(投資適格の境界線) |
| BB | Ba | 投機的要素あり(ジャンク債の始まり) |
| B | B | 投機的 |
| CCC以下 | Caa以下 | デフォルトリスク高 |
投資適格債 vs ジャンク債
格付けを境界線として、債券は2つに分類されます:
投資適格債(Investment Grade)- 格付け:BBB(Baa)以上
- 特徴:信用力が高く、デフォルト(債務不履行)リスクが低い
- 利回り:低め
- 例:Apple、Microsoft、トヨタなど大企業の社債、先進国の国債
- 格付け:BB(Ba)以下
- 特徴:信用力が低く、デフォルトリスクが高い
- 利回り:高め(リスクの対価として)
- 例:新興企業、業績不振企業、新興国の国債
注意
「ジャンク(Junk)」は「がらくた」という意味ですが、投資価値がないわけではありません。高いリスクを取る代わりに、高い利回りが期待できます。
なぜリスクが高いと利回りが高いのか?
誰も返ってこないかもしれないお金を、低い金利で貸したくはありません。
- 信用力の低い企業:高い金利を払わないとお金を借りられない
- 投資家:リスクの対価として高い金利を要求する
これが「ハイリスク・ハイリターン」の原則です。
スプレッドとは?「リスクの対価」を数値化したもの
ここからが本題です。スプレッド(Spread)とは何でしょうか?
スプレッド=利回りの差
スプレッドとは、ジャンク債の利回りと、安全な債券(国債や投資適格債)の利回りの差です。

スプレッド = ジャンク債利回り − 国債利回り
例えば:
- 米国10年国債の利回り:3%
- ジャンク債の平均利回り:8%
- スプレッド:8% − 3% = 5%
この5%が、投資家がジャンク債を買う際に要求する「リスクプレミアム」です。
スプレッドが示すもの
スプレッドは、投資家がリスクをどう評価しているかを示します。
| スプレッド | 意味 |
|---|---|
| 狭い(例:3%) | 投資家はリスクを低く見積もっている |
| 広い(例:8%) | 投資家はリスクを高く見積もっている |
スプレッドと市場心理の関係
ここが最も重要なポイントです。
スプレッドの縮小・拡大は、市場全体の心理状態を反映します。
スプレッド縮小=強欲(Greed)
投資家が楽観的なとき:
- 「景気が良いから企業は倒産しないだろう」
- 「リスクを取って高い利回りを狙おう」
- ジャンク債を積極的に買う
- ジャンク債の需要増加 → 価格上昇 → 利回り低下
- スプレッドが縮小
これは「リスクオン」の状態です。投資家は恐れずにリスクを取りに行っています。
スプレッド拡大=恐怖(Fear)
投資家が悲観的なとき:
- 「景気が悪化して企業が倒産するかも」
- 「リスクを避けて安全な資産に逃げよう」
- ジャンク債を売って国債を買う
- ジャンク債の需要減少 → 価格下落 → 利回り上昇
- スプレッドが拡大
これは「リスクオフ」の状態です。投資家は恐怖から安全資産に逃避しています。
まとめ:スプレッドと市場心理
| スプレッド | 市場心理 | 投資家の行動 |
|---|---|---|
| 縮小 | 強欲(Greed) | リスクオン、ジャンク債を買う |
| 拡大 | 恐怖(Fear) | リスクオフ、安全資産へ逃避 |
歴史的事例:危機時のスプレッド
スプレッドが市場心理を反映することは、歴史的な危機時に顕著に表れます。
リーマンショック(2008年)
- スプレッドが20%以上に急拡大
- 投資家が極度の恐怖状態に陥った
- 「企業が大量に倒産する」という懸念から、ジャンク債が投げ売りされた
コロナショック(2020年3月)
- スプレッドが急拡大(約10%程度)
- ただし、FRBの迅速な金融緩和により、比較的早く回復
- リーマンショックほどの拡大には至らなかった
通常時
- スプレッドは3〜5%程度で推移
- 経済が安定していれば、スプレッドも安定
| 時期 | スプレッド | 状況 |
|---|---|---|
| 通常時 | 3〜5% | 平穏 |
| 景気後退懸念 | 5〜8% | 警戒 |
| 金融危機 | 10%以上 | 恐怖 |
| リーマンショック | 20%以上 | パニック |
実際の商品:ジャンク債に投資するには
個人投資家がジャンク債に投資する場合、ETF(上場投資信託)が一般的です。
代表的なジャンク債ETF
| ティッカー | 名称 | 特徴 |
|---|---|---|
| HYG | iShares iBoxx $ High Yield Corporate Bond ETF | 最大規模、流動性高い |
| JNK | SPDR Bloomberg High Yield Bond ETF | HYGに次ぐ規模 |
日本からの買い方
- 外国株取引口座を開設(SBI証券、楽天証券、マネックス証券など)
- 外国株取引口座で上記ETFを検索
- ドル建てで購入
注意
ジャンク債ETFへの投資には、信用リスク(デフォルトリスク)、金利リスク、為替リスクがあります。分散投資の一部として検討してください。
Fear & Greed Indexの「Junk Bond Demand」
CNNのFear & Greed Indexでは、ジャンク債スプレッドが7つの指標の1つとして採用されています。
計算方法
- ジャンク債と投資適格債のスプレッドを計測
- 過去の平均からどれだけ乖離しているかを算出
- 0(極度の恐怖)〜 100(極度の強欲)でスコア化
読み方
| スコア | 判定 | スプレッドの状態 |
|---|---|---|
| 0〜25 | 極度の恐怖 | スプレッド大幅拡大 |
| 25〜45 | 恐怖 | スプレッド拡大 |
| 45〜55 | 中立 | スプレッド平均的 |
| 55〜75 | 強欲 | スプレッド縮小 |
| 75〜100 | 極度の強欲 | スプレッド大幅縮小 |
逆張り指標としての使い方
Fear & Greed Indexは逆張り指標として使われることが多いです。
- 極度の恐怖(スプレッド拡大)→ 買いのチャンス?
- 極度の強欲(スプレッド縮小)→ 警戒が必要?
ウォーレン・バフェットの名言「他人が恐れているときに強欲であれ、他人が強欲なときに恐れよ」は、まさにこの考え方です。
重要
ただし、Fear & Greed Indexは短期的な市場心理を示すもので、長期投資の判断材料としては限界があります。他の指標と組み合わせて使うことが重要です。
まとめ
債券の基礎
- 債券は国や企業にお金を「貸す」こと
- 株式は会社を「所有する」こと
- 債券は株式より一般的にリスクが低い
信用格付け
- 投資適格債:BBB以上、信用力が高い、利回り低め
- ジャンク債:BB以下、信用力が低い、利回り高め
- ハイリスク・ハイリターンの原則
スプレッド
- スプレッド = ジャンク債利回り − 国債利回り
- リスクプレミアム(リスクの対価)を数値化したもの
市場心理との関係
- スプレッド縮小 → 強欲(Greed)、リスクオン
- スプレッド拡大 → 恐怖(Fear)、リスクオフ
投資への活用
- Fear & Greed Indexの1指標として市場心理を把握
- 逆張り指標として活用可能
- ただし、他の指標と組み合わせて判断することが重要
参考リンク





